TRIPLE-1は、メタバースを実装するには、高解像度な 3DCG(3次元空間でのコンピュータ・グラフィック)をリアルタイムで高速処理するための「レンダリング技術」(レンダリングとは、データを処理または演算することで、画像や映像を表示させること)が重要であると考えています。今回のプロジェクトでは、大学や研究機関の計算センター等の高性能コンピューティング用途に開発されたNECのベクトル型スーパーコンピュータ「SX-Aurora TSUBASA」を、TRIPLE-1の半導体開発チームがコンバージョンすることで、グラフィック処理用の超高速レンダリング・マシンへと進化させることを目指します。すでに、TRIPLE-1は、 「SX-Aurora TSUBASA」を活用した実験において、従来のレンダリング・マシンの10倍ものパワーを出せることを確認しています。
商用化を達成した後は、マシンをグローバル市場に展開していくことを計画しており、TRIPLE-1が世界販売を行っていきます。
■ 世界でオンリーワンの「ベクトル型スーパーコンピュータ」が、メタバース実現の鍵に
NECはこれまで40年間にわたりスーパーコンピュータ「SX シリーズ」を開発し続けてきました。現在は「SX-Aurora TSUBASA」が最新版になります。その最大の特徴は、演算精度とコンピューティング性能の両立を実現するベクトル・プロセッサの技術にあります。ベクトル・プロセッサは、“一度に膨大な量のデータをまとめて正確に処理”できるため、地球規模のシミュレーション・AI・ビッグデータなどに活用することができます。例えば、「SX-Aurora TSUBASA」は地球温暖化予測に活用されたり、欧州の気象庁に導入されたりしています。
今回のプロジェクトは、「SX-Aurora TSUBASA」の極めて高い処理能力に注目していたTRIPLE-1の開発チームが、この日本独自のスーパーコンピュータの技術をコンバージョン(転換)して、メタバースを実装するための「画像処理エンジン(超高速レンダリング・マシン)」へと進化させる構想を立案し、NECにプロジェクト提案したことから始まりました。
メタバース空間では、体験者が没入できるようなリアリティのある擬似世界を表現するために、“高解像度な3DCG”(大容量のデータ)を“リアルタイムで遅延なく処理し続ける”必要があるため、「SX-Aurora TSUBASA」が持つ強みである“一度に膨大な量のデータをまとめて処理できる”能力が最大限に発揮できると考えたのです。
TRIPLE-1は、両社が持つ先端技術をハイブリッドすることで、全世界が待望するメタバースを実現させていきます。また、メタバースだけでなく、人工知能(AI)の分野でも、新しい活用方法を模索していく予定です。
■ 「超高速レンダリング・マシン」により、映画・アニメ・建築業界にもイノベーション
現在、レンダリング技術はさまざまな産業で使われています。「3DCG」「アニメーション」「映画(VFX等)」「ゲーム」「デジタル建築」「工業デザイン」などの分野で、グラフィックを処理するためにレンダリングが用いられています。
しかし、一般で使用されている既存のレンダリング・マシンで高解像度・大容量のデータを演算・処理しようとすると、“レンダリングに長時間かかる”ということに加えて、“レンダリング・マシンが高額である”という問題があります。例えば、今年に世界公開されたフル3Dの有名な映画作品では、1時間29分の動画を製作するのに45万時間ものレンダリングが必要となり、最大で200台以上のレンダリング・マシンを動かし続けたにもかかわらず、半年から1年の期間がかかったと言われています。それが、TRIPLE-1が今回のプロジェクトで開発する「超高速レンダリング・マシン」を使えば、レンダリング時間は10分の1にまで短縮できると予測しています。マシンのコストに関しても、世界市場で競争力のある価格帯にまでしていく予定です。
また、新しく開発するマシンの実証実験を行うにあたっては、ハリウッド映画の3DCGを制作しているアーティストたちや、世界的なゲーム・クリエイターたちにも、レンダリング・マシンのテストを行ってもらう予定です。最先端の現場で活躍するアーティストやクリエイターたちと協同で実証を行うことで、グラフィック市場の最新のニーズを正確に把握し、「マーケットの声」を開発に反映させていきます。
■ TRIPLE-1の独自開発により、世界的なソフトウェアにも対応可能に
レンダリングを行うためには、ハード(レンダリング・マシン)だけでなく、ソフト(レンダリング・ソフトウェア)も必要です。現在、世界ではAutodesk社やMAXON社などの大手企業が、商業用のレンダリング・ソフトウェアを展開しており、クリエイターなどに広く使われています。
今回のプロジェクトで開発する「超高速レンダリング・マシン」は、こうした既存のレンダリング・ソフトウェアでも動かすことを可能にするのが重要なポイントです。TRIPLE-1の開発チームは、「既存のレンダリング・ソフトウェア」と、新開発する「超高速レンダリング・マシン」をストレスなくつなげることができるように、お互いのデータをスムーズに変換することができる特別な集積回路を開発します。先端半導体の中でもASIC(特定の用途向けに、複数機能の回路を1つにまとめた集積回路)の開発を進めてきたTRIPLE-1だからこその技術になります。
これにより、世界中のクリエイターたちは、既存のソフトウェアをそのまま使いながら、新しい「超高速レンダリング・マシン」を活用していくことができます。TRIPLE-1にとっても、グローバル市場を獲得していくためには、すでに市販されているソフトとの“互換性”こそがキーになると考えています。なお、建築やデザイン業界で広く使われているソフトウェアである「CAD」でも活用できるように、開発を行う予定です。
■ 高速通信・データセンター・グリーンエネルギー メタバースに向けた挑戦
今後、メタバースを実現させていくには、レンダリング・マシン以外にも必要不可欠なものがあります。例えば、高解像度の3DCG空間をリアルタイムで動かし続けるためには、大容量のデータを高速通信技術を使ってデータセンターへとつなげて演算処理をし続ける必要があります。データセンターでは膨大な量の電力が使われますが、カーボンゼロの時代においては、グリーンエネルギーによって賄われるべきです。つまり、メタバースを実装するためには、高速通信・データセンター・グリーンエネルギーなども整備していかなければなりません。さらには、高速の大容量メモリや、高速のチップ間接続バスなども必要になってきます。TRIPLE-1は、メタバースが社会を大きく進歩させると信じて、こうした未来社会に向けたさまざまな製品を生み出し、インフラ環境を創り続けてまいります。
■ TRIPLE-1からのコメント:取締役副社長 大島 麿礼
「TRIPLE-1は2016年の創業以来、先端半導体を活用したデータセンター事業(AIディープラーニング、暗号通貨マイニング等)、ローカル5G基地局等の高速無線通信事業、蓄電池を含むグリーンエネルギー事業等を推進して参りました。このどれもが、メタバース、スマートシティやカーボンニュートラル社会といった未来社会を実現していくために必要不可欠な技術領域だと考えているからです。
今回は、NECとの新たな協業により、またひとつ、TRIPLE-1として描く未来社会に近づけると信じています。MADE IN JAPANの先端技術で、再び世界に飛び出し、世界をアップデートしていける挑戦が出来ることを、心から嬉しく思っております」
■ NECからのコメント:HPC統括部長 近藤 正樹
「先端技術により社会課題の解決を目指されるTRIPLE-1様の今回の提案に共感いたしました。TRIPLE-1様と手を組むことで、当社が長年にわたり開発・提供してきたスーパーコンピュータ「SX-Aurora TSUBASA」が、レンダリング・マシンという新しい領域で適用され、TRIPLE-1様の手がけるアプリケーションが飛躍的な進歩をする可能性があることに大きな期待を抱いております。また、世界トップレベルのパフォーマンスを誇る「SX-Aurora TSUBASA」を、汎用性のある画像処理(レンダリング)の分野で活用することができれば、更に大きなイノベーションを起こす可能性があると考えています。NECは今後も、テクノロジー企業として、メタバースを含むデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させていき、TRIPLE-1様と連携しながら未来社会への貢献をしてまいります。」
■ NEC 会社概要
商 号: 日本電気株式会社
代表者: 取締役 代表執行役社長 兼 CEO 森田 隆之
所在地: 〒108-0014 東京都港区芝五丁目7番1号
設 立: 1899年7月17日
資本金: 4,278 億円
U R L : https://jpn.nec.com/
■ TRIPLE-1 会社概要
商 号: 株式会社 TRIPLE-1
代表者: 代表取締役社長 山口 拓也
所在地: 〒812-0013 福岡県福岡市博多区博多駅東1-14-20 ITビルⅡ 7階
設 立: 2016年11月1日
資本金: 39 億 6,289 万 5,400 円(資本準備金含む)
U R L : https://triple-1.com/
■ 商標
記載されている製品名などの固有名詞は、各社・各組織の商標または登録商標です。